ソフトウェアの潮流

経済協力開発機構 (OECD)、経済産業省 (METI)、独立行政法人経済産業研究所 (RIETI)共催で行われたカンファレンス

「ソフトウェア分野におけるイノベーション」-最新トレンドと産業競争力への示唆-

に参加してきた。

ここのところ市販製品やインフラ設備等の大規模開発から遠ざかっているため、
ソフトウェア工学やプロジェクト管理手法の最新の情報を得るのが目的。

プログラム概要はこちら。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/08100601/info.html

ネットビジネスの先見性や最先端のテクノロジーマップについて熱く語るよくあるトークセッションとは違い、内外の社会科学の研究者や企業の経営者層及び政府系ソフトウェア支援団体が、経済・政策面から俯瞰したソフトウェア業界の推移とこれからを論じる会だった。

登壇者の発表で共通するトレンドとしては以下5つくらい。

1)UbiquitousNetwork + Identification
・”いつでも、どこでも、誰とでも”から”いまだけ、ここだけ、あなただけ”のサービスが
必要とされている。
DoCoMoが最近発表した行動支援型サービスみたいなもの。

2)製品からサービスへの移行
・代表的IT企業(MS,Oracle,Siebel)などのプラットフォーム提供企業は、
2000年~2001年を境として製品販売の売上とサービスやメンテの売上
が逆転し、現在はサービス・メンテが80%を占めてきている。
・最近は製品販売とサービス・メンテを組み合わせた「ハイブリッド型」へ移行してきた。
・一部のヒット商品やトップシェア企業を除き、純粋なソフトウェア製品企業は姿を消しつつある。
・また純粋なITサービス企業もまた消えつつある。(製品とサービスの境界がなくなってきた)

3)プラットフォーム化
・低価格化、短納期をクリアするために、共通プラットフォームを作って効率化。

4)標準化
・いわゆるプロトコルや製品仕様の標準化ではなく、組織体制や開発・販売プロセスの標準化。
関係者間の仕組みを標準化することにより、全体効率をあげる。

5)グローバル化
・グローバル標準・国別標準を採用することにより、規模メリットを享受。

どれも目新しい見解ではないが、現場感覚とはほぼ一致する。
統計データとしても裏付けられた状況であることを改めて認識した。

その他、随所でプロジェクト管理についての重要性についてふれられていた。
古くて新しい問題であり、まだまだ発展途上。

日本のJISA(情報サービス産業協会)が発表していた最新の管理指標は、かっちりとした旧来のウオーターフォールモデルに適用するような指標が多かった。

調査統計・分析は大手企業の開発サンプルが中心となるため、大規模な社会インフラ向けのソフトウェア開発についての考察が多くなるのは理解はできる。
それにしても、いわゆるフォーナイン(99.99%)の信用を求められる重要なインフラを構築するには品質を上流工程で作りこんで、工数をかけて検証していくウオーターフォール手法がやはり一番なのだろうか。

ただ全てのソフトウェア開発にこのやり方を適用していたら、管理工数は膨大となるし、新しいサービスはなかなか生まれてこないと思われる。
管理手法に関して言えば、標準化にとらわれないで、ターゲットに合わせた最適な手法をいかに柔軟に使いこなせるかが、この先より一層重要になってくるであろう。

丁度、インプレスITが提供する技術情報サイト(ThinkIT!)でも、本日より一ヶ月間かけてプロジェクト管理術の特集をやるようだ。
目次を見る限りこちらは現場目線の具体的な手法がメイン。何かよいヒントがみつかかれば。

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なお、今回主催機関の一つである経済産業研究所での研究成果はディスカッションペーパーとしてWEBで公開されている。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/act_dp.html

技術開発に関してのペーパーもいくつかある。
技術書からは見えない、業界の大きな潮流を確認するためのツールの一つとして今後使えそう。
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